NENの診断方法には、病理診断(組織診断)やホルモン濃度の測定、画像検査など、いくつかの方法があります。最善の治療法を選択するためには、どこに腫瘍があるか(局在診断)や病期、腫瘍の悪性度などを正確に診断することが必要です。
病理診断(組織診断)
病理診断とは、腫瘍組織の一部を採取し(生検)、それを顕微鏡で観察しておこなう検査です。腫瘍細胞の性質や悪性度を診断します。
免疫染色法を使って、NENであることが証明されれば「Ki-67」という細胞増殖に関わるたんぱく質を持つ細胞(Ki-67陽性細胞)がすべてのNEN細胞の中で占める比率を計測します。この「Ki-67指数」や、核分裂する細胞の割合をみる「核分裂像」などの指数により、NENの悪性度を診断できます。
インスリノーマやガストリノーマなどの機能性NETは、腫瘍が非常に小さく、局在を診断しにくいことがあります。そのため、選択的動脈内刺激薬注入法(SASIテスト)やソマトスタチン受容体画像(SRI)を使う場合もあります。
また、SRIは治療薬選択を目的としてソマトスタチン受容体の発現、確認するために行われることもあります。
ホルモン測定
機能性NETが疑われる場合には、先ず空腹時に採血をおこない、血液中のホルモン濃度を調べます。機能性NETと診断されたら、次には画像検査(CT、MRI、エコー検査)により腫瘍の場所を診断確認します。膵臓とその周辺に発生する機能性NETについては、通常の画像検査で正確な位置が診断できない場合には、選択的動脈内刺激薬注入法(SASIテスト)が勧められます。
選択的動脈内刺激薬注入法(SASIテスト)とは
選択的動脈内刺激薬注入法(Selective Arterial Secretagogue Injection Test:SASIテスト)とは、脚の付け根から大動脈に細いカテーテルを挿入し、膵臓や十二指腸を栄養する動脈に少量の刺激薬を注入して、機能性NETの局在を診断する方法です。薬を入れる前と後の血液を肝静脈から採取し、ホルモン濃度の変化を測定します。この検査をすることで、膵臓や十二指腸付近の機能性NENの存在する場所を知ることができます。
画像診断
画像診断は、腫瘍の場所や性質を知るためにおこなう検査で、X線を使用するコンピュータ断層撮影検査(CT)や、強力な磁気を利用して体内の様子を画像化する核磁気共鳴画像検査(MRI)、超音波(エコー)をあてて見る超音波検査など、また、胃カメラなど、内視鏡を使って体内の様子を映し出す内視鏡検査もおこないます。
消化管NETの診断では、胃カメラや大腸カメラ、小腸カメラ、カプセル内視鏡などで腫瘍を観察し、同時に腫瘍から組織の一部を採取する生検をおこなうこともあります。膵NENでは、腹部超音波検査や超音波内視鏡検査、造影CT、MRIなどの検査で診断をおこないます。
ソマトスタチン受容体シンチグラフィー(SRSまたはSRI)とは
NETには、神経内分泌細胞の細胞膜上に「ソマトスタチン受容体」というたんぱく質が発現しています。そこで、ソマトスタチン受容体に結合する性質を持つ放射性の薬剤を注射して撮影することで、腫瘍が全身のどこにあるかを確認することができます。一般的な画像検査では腫瘍の場所を特定できない場合に有効な検査です。ただし、NECではソマトスタチン受容体が少ないので、多くの場合、腫瘍は描出できません。
また、ソマトスタチン受容体を使用した治療薬(ソマトスタチンアナログ製剤)や、体内から放射線を照射する治療法「ペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)」の対象となるかどうかを調べるためにおこなうこともあります。
本邦では標識オクトレオチド類似体を使用するオクトレオシンチグラフィー(SRS)が保険適応されているが、国際的には68Ga標識のPETを用いるPET/CT(SRI)が普及しています。
ソマトスタチン受容体を確認する検査
ソマトスタチン受容体に結合する放射性物質を結合したお薬(インジウム標識オクトレオチド類似体)を注射して、専用のカメラ(ガンマカメラ)で全身を撮像します。